口コミが低い民宿で、思わずご飯をおかわりした
一泊二食付き5000円。能代で見つけた“評価だけでは分からない価値”
今回の現場は、秋田県能代市でした。
ところが宿を探してみると、いつもとは様子が違います。
ちょうど夏祭りの期間と重なっていたため、能代市周辺のホテル料金が軒並み高騰していました。
普段の2倍以上になっているホテルもあります。
仕事の出張ですから、宿泊費を際限なく上げるわけにはいきません。
いろいろ探した結果、ようやく見つけたのが、一泊二食付きで5000円という民宿でした。
今どき、二食付いて5000円です。
どう考えても破格です。
しかし、気になるのは口コミでした。
見つかるのは、マイナスの評価ばかり
そもそも口コミの数があまり多くありません。
そして、数少ない口コミを読んでみると、書かれているのはマイナスの評価ばかりでした。
「無駄におかずの品数は多いが、基本的に冷めていて、どれもおいしくない」
「風呂は一人用の小さな湯船しかない」
「トイレが汲み取り式」
そんな内容が並んでいました。
これを読んでしまうと、さすがに期待はできません。
一緒に現場へ行った相棒も、
「せっかくの泊まりなのに、楽しみがなくなった」
と、がっかりしていました。
出張は大変ですが、仕事を終えたあとの食事や晩酌は、泊まりの楽しみの一つです。
その楽しみまで期待できないとなると、気持ちが下がるのも分かります。
それでも、ほかのホテルは高すぎます。
今回は、
「寝られればいい」
くらいの気持ちで、その民宿へ向かいました。
期待していなかった夕食を、一口食べてみたら
建物に入ってみると、確かに設備は新しくありませんでした。
お風呂も大きくはありません。
トイレも、今ではあまり見かけなくなったタイプです。
全体的に昭和の雰囲気が残っており、新しいホテルに慣れている人には、受け入れにくいところがあるかもしれません。
口コミに書かれていたことが、すべて嘘だったわけではありません。
そして、いよいよ夕食です。
口コミには、
「おかずの品数は多いが、どれもおいしくない」
と書いてありました。
正直なところ、私もまったく期待していませんでした。
ところが、一口食べてみると、
「あれ、おいしいぞ」
と思ったのです。
次のおかずを食べても、おいしい。
さらに別のおかずを食べても、やはりおいしい。
しかも、本当に品数が多い。
“無駄に多い”のではなく、私にとっては“うれしいほど多い”でした。
結局、私は思わずご飯をおかわりしてしまいました(笑)。
持ち込み自由で、楽しい晩酌になった
飲み物は持ち込み自由でした。
自分たちで好きな飲み物を用意して、品数の多い料理をつまみながら晩酌する。
最初は、
「今夜は楽しみがないな」
と思っていたはずなのに、結果的には楽しい晩酌タイムになりました。
翌日、相棒にも感想を聞いてみました。
すると、
「料理がおいしかった。事前の情報がひどくて、期待していなかったのが逆に良かったのかな」
と言っていました。
確かに、期待値が低かった分、実際の料理がおいしく感じられた面はあるかもしれません。
それでも、二人とも料理がおいしいと感じたのは事実です。
設備は古くても、言葉は温かかった
料理のおいしさ以上に、私の心に残ったものがあります。
それは、民宿の方との会話でした。
夕食のときには、
「ご飯はたくさん炊いたから、お腹いっぱい食べてね」
と声をかけてくれました。
ホテルでは、なかなか聞くことのない言葉です。
料理を提供して終わりではなく、
「遠慮しないで、たくさん食べていってね」
という気持ちが伝わってきました。
仕事と長距離移動で疲れていた私たちにとって、その言葉は何よりのごちそうだったのかもしれません。
そして、
「ゆっくり休んでね」
帰るときには、
「どうぞお気をつけてね」
と声をかけてくれました。
ほんの短い言葉です。
特別なサービスでもありません。
それでも、その一言一言に人の温かさを感じ、私はすごく癒されました。
ホテルにはない、民宿ならではの距離
新しいホテルには、きれいな部屋があります。
広いお風呂。
新しいトイレ。
便利な設備。
整ったサービス。
それはそれで、とてもありがたいことです。
しかし今回の民宿には、新しいホテルとは違う良さがありました。
宿の人の顔が見える。
言葉を交わせる。
こちらの疲れを気遣ってくれる。
そして、まるで親戚の家に泊まりに来たように、
「たくさん食べて」
「ゆっくり休んで」
「気をつけて帰ってね」
と声をかけてくれる。
設備は古くても、そこには人と人との距離の近さがありました。
口コミには、お風呂の小ささやトイレの古さは書かれていました。
しかし、民宿の方がかけてくれた温かい言葉までは書かれていませんでした。
画面に表示される星の数では、人の温かさまでは測れないのです。
5000円の中に入っていたもの
今回、私たちが5000円で受け取ったものは、寝る場所と二回の食事だけではありませんでした。
お腹いっぱい食べられる料理。
好きな飲み物を持ち込んで楽しむ晩酌。
疲れた体を休ませる場所。
そして、民宿の方からかけてもらった温かい言葉。
そう考えると、私はますます、
「この宿は、本当に評価が低い宿なのだろうか」
と思います。
確かに設備だけを見れば、今の時代には合わない部分があります。
しかし、人の温かさという物差しで見れば、むしろ評価は変わります。
新しい設備は、お金をかければ導入できます。
しかし、人を思いやる言葉や、心からの気遣いは、設備のように簡単に入れ替えられるものではありません。
星の数では、人の温かさは測れない
インターネットの口コミは便利です。
しかし、そこに書かれているのは、その人が気づいたことだけです。
設備の古さに目が向いた人。
料理の温度が気になった人。
お風呂の広さを重視した人。
それぞれの感想は、間違いではありません。
けれど、誰かが見落とした良さが、そこには残っているかもしれません。
今回の民宿で私が受け取ったのは、
「お腹いっぱい食べてね」
「ゆっくり休んでね」
「どうぞお気をつけてね」
という、短くても温かい言葉でした。
仕事と移動で疲れていたからこそ、その言葉が心に染みました。
設備は古かった。
でも、料理はおいしかった。
そして、そこにいた人は温かかった。
一泊二食付き5000円。
私にとっては、値段以上のものを受け取った宿でした。
誰かの低い評価だけで、自分まで同じ景色を見る必要はありません。
最後は自分の目で見て、自分の舌で味わい、自分の心で感じる。
能代の民宿で過ごした一晩は、その大切さを教えてくれました。
口コミは「事実」ではなく、その人の評価
今回あらためて感じたのは、口コミに書かれていることと、自分が実際に感じることは、必ずしも同じではないということです。
料理が冷めている。
お風呂が小さい。
トイレが古い。
これらは、ある程度事実なのかもしれません。
しかし、その事実をどう受け止めるかは人によって違います。
新しくてきれいな設備を重視する人なら、低い評価になるでしょう。
大きなお風呂でゆっくりしたい人なら、不満が残ると思います。
一方で、私たちが今回重視したのは、
仕事先から無理なく行けること
夏祭り期間でも泊まれること
宿泊費を抑えられること
夕食と朝食が付いていること
仕事の疲れを取って翌日に備えられること
でした。
その条件で考えれば、一泊二食付き5000円は破格です。
設備の古さを差し引いても、そこまで低く評価する宿ではない。
私はそう感じました。
同じ「品数が多い」でも意味は変わる
口コミには、
「無駄におかずの品数が多い」
と書かれていました。
しかし私は、
「これだけの値段で、こんなに品数が多い」
と感じました。
見ているものは同じです。
それでも、一人は“無駄”と感じ、もう一人は“お得”と感じる。
面白いものです。
結局、評価というものは、その人が何を期待し、何を大切にしているかで変わります。
新しい設備を求める人。
豪華さを求める人。
安さを求める人。
料理を楽しみにする人。
寝られれば十分という人。
同じ宿へ泊まっても、同じ評価にはなりません。
口コミは参考になります。
私も店や宿を探すときには、口コミをよく見ます。
しかし、口コミは絶対的な答えではありません。
誰かの価値観を通して見た、一つの感想なのです。
安い宿には、安い理由がある
もちろん、
「安いのだから、何でも我慢すればいい」
という話ではありません。
清潔さや安全性に問題があるなら、価格とは別に考える必要があります。
安い宿には、安いなりの理由があります。
今回の民宿であれば、設備が旧式であること。
大きなホテルのような快適さや便利さがないこと。
それを理解せず、新しいビジネスホテルと同じものを求めれば、不満が出るでしょう。
しかし、一泊二食付き5000円の民宿と、夏祭り期間で料金が2倍以上になったホテルを、同じ物差しだけで比べるのも違うと思います。
大切なのは、
支払った金額に対して、何を受け取れたか
ではないでしょうか。
私たちは、温かい対応を受け、十分に食事を楽しみ、体を休めて翌日の現場へ向かうことができました。
それで5000円です。
私にとっては、十分に価値のある宿でした。
期待しすぎないから、見えるものもある
事前の口コミがあまりにも悪かったことで、私たちの期待値は完全に下がっていました。
だからこそ、料理を一口食べたときの、
「おいしいじゃないか」
という驚きが大きくなったのかもしれません。
これは宿だけでなく、人間関係や人生にも当てはまるような気がします。
勝手に期待を膨らませると、少し違っただけで失望します。
反対に、先入観だけで最初から価値がないと決めつければ、本当の良さを見逃します。
期待しすぎない。
でも、決めつけない。
実際に自分で見て、食べて、体験してから判断する。
その姿勢が大切なのだと思います。
星の数より、自分の感覚
インターネットの口コミは便利です。
知らない土地で宿や店を探すとき、私も助けられています。
しかし、画面に表示された星の数だけで、すべてを判断してしまうのはもったいない。
今回の民宿も、口コミだけを見れば泊まりたくない宿でした。
ところが実際に泊まってみると、
「設備は古いけれど、料理はおいしい」
「飲み物を持ち込んで、楽しく晩酌できる」
「二食付いて5000円なら、十分ではないか」
という印象に変わりました。
口コミを書いた人が間違っているわけではありません。
私たちの評価だけが正しいわけでもありません。
ただ、同じものを見ても、価値の感じ方は人によって違うということです。
誰かの評価を参考にしながらも、最後は自分の目で見て、自分の舌で味わい、自分の感覚で判断する。
そんな当たり前のことを、能代の古い民宿で思い出しました。
そして何より、一泊二食付き5000円で、ご飯をおかわりするほど満足できたのです。
私としては、十分に“当たり”でした。
――へろっさん
人生後半世代のワクワク挑戦ナビゲーター
毎週土曜日は、東北各地を回る現役サービスマンとして、出張先で出会った食事や宿、日常の中で感じたことを書いています。
口コミや星の数だけでは分からない価値があります。実際に自分で体験したからこそ書ける、出張先の小さな発見をこれからもお届けします。
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へろっさん、秋田県能代市の宿、とりあげていただいてありがとうございます😊
ある程度上の年齢の人なら古さは懐かしさ、若い人には古い=ボロいとか、不潔そうに見えてしまうんでしょうね🥲
事実、古いと隙間風とか虫とか入りやすいですけど😂
それを上回る暖かさ、サービス👍
私も昔男鹿市の民宿にとまったさい、二食付きで一万円しなかったのに、2段のお膳に乗り切らないくらいの海の幸でした🐟
へろっさん
5000円の中には、形で見えないものがたくさん入ってたのですね😊
それを受け取れるへろっさんが素敵な方なんだと思います♪